庄内弁については、兄が書いていた昔話から興味を持って、10数年前からホームページにちょこちょこと書いていたのですが、真剣に考えたことはありませんでした。そもそも、今の庄内の人は、庄内弁などわかりません。たまに私が庄内に帰って、昔の言葉で話すと、何を言っているかわからないなどと、笑われる始末です。
そんなこともあったので、庄内弁らしく聞こえる庄内弁、といったものを遊びで考えていました。
もう、10年も昔になってしまいましたが、山田洋二さんが監督した松竹映画「たそがれ清兵衛」の方言指導をしたことがあります。監督が私のホームページを見て、メールで打診してきたものです。映画の世界には全く関係ありませんでしたが、非常に興味があったので、引き受けました。
その時は、庄内を離れて、40年近かったし、ほとんど庄内には帰っていなかったので、私の庄内弁がどの程度のものなのか、自信がないまま、稽古に入り、その中で、映画の世界では、正調の方言というか、ネイティブな言葉では、だめなのだということを知りました。
方言だけれども、誰にでもわかる方言、庄内弁らしく聞こえる標準語とでもいうか、それなら得意なので安心はしましたが、どこか複雑な思いでした。
おそらく、庄内の人が観たら、これは庄内弁ではない、というに違いありません。実際、映画が公開されてから、いろいろな方々から質問などをされましたが、その都度、あれは庄内弁ではなく、海坂弁だ、なとと苦しい言い逃れをしていました。
その映画が縁で、ある方から、庄内弁について、短歌の本に書いてもらえないだろうかというお話があり、正しい庄内弁を考えるきっかけにもなるし、また、映画で、うその庄内弁を広めたといった不信感を払拭するチャンスだと思って、書いてみることにしました。
ここに掲載した4編は、かまくら春秋社から出版されている「星座」という短歌の本の、「日本の方言」というコーナーに連載されたものです。
当初、2回の予定でしたが、好評ということで、4回まで書くことになったものです。
限られた字数と回数なので、十分とはいえませんが、それでも、私が庄内弁について知っていることはあらかた、書くことができたと思っています。これに、庄内弁の事例と、近隣の方言との関連性などを加えれば、庄内弁とは何か、見えてくるのではないかと思っています。
▲今はほとんど見られなくなった茅葺屋根。これは、鶴岡市田麦俣の多層民家の兜づくり屋根。
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