●フキノトウ03.01.25
●サザンカ02.11.24
●カヤ02.10.13
●クルミ02.09.28
●ホオズキ02.09.23
●アキグミ-202.09.23
●アキグミ-102.09.08
●コスモス02.08.31
●サルスベリ02.08.23
●トキワハゼ02.08.20
●ネムノキ02.08.18
●コウホネ02.08.13
●キツネノカミソリ02.08.12

アキグミ-1
02.09.08
この話は長くなりそうなので、2回に分ける。
花の思い出というよりは、釣りの思い出なのだが……。

最近は、アキグミを見かけたことがない。あのちょっと白ごまをはいたような葉と、実、そしてその味は独特で、子供の頃の秋の風景と切っても切れない思い出として残っているのだが、どうしてしまったのだろうか。

◆  ◆  ◆
イメージ
▲鶴岡側の土手から見た初秋の赤川と月山。(2001.09.23撮)
赤川の流れは子供の頃とは大きく変わってしまった。

昭和30年頃、庄内地方の赤川中流部に、3つの大きな溜りがり、土地の子供達に「3つの溜り」と呼ばれ、雑魚しめのメッカとなっていた。
「溜り」というのは、いわゆる水溜りのことであるが、そこは、赤川が緩やかにカーブするところで、毎年、夏の渇水期になると本流から取り残され、水溜りになるのである。
「一の溜り」は、広いのだが浅く、深いところでも1メートル程度で、ハヤやワカサギ(東京で言うオイカワのこと。オスのヒレは虹色をしていて非常に美しい)の宝庫だった。特にワカサギはすぐ石の下に隠れる性質があり、ばちゃばちゃ泳ぎ回った後に、石の下に手を入れて、いくらでも手づかみすることができた。
「二の溜り」は、カーブの頂点に当たるところで、「一の溜り」より少し狭いのだが、岸沿いには、護岸用の崩れた枕礁があり、深いところでは、3メートルにもなるところで、大きな鯉やフナ、ナマズがたくさんいた。雑魚しめには、一番魅力的な場所だった。
ササアミ(鳥を捕まえるカスミ網のようなもの。高さ1メートル、幅4メートルくらいの、上に木でできた浮きが付き、下に鉛の重りがついた漁網)を仕掛け、ヤス(魚を突く3〜5個の針がついた銛)を持って潜り、鯉やナマズを捕まえたのである。
「三の溜り」は、他に較べると小さく、薮の中に隠れていたが、非常に深く、青々としていて、底が見えなかった。水も湧いていて、真夏でもとても冷たかったのを覚えている。それでも川の増水期に入り込んだ、大きな鯉が住んでいて、子供達にとって、一度は潜ってみる価値のある場所だった。
岸は水面より50〜60cm高くなっていて、井桁に組んだ枕礁で護岸され、岸際はネコヤナギやネムノキ、名前も分からない低木の薮になっていて、枝が水面にまではり出し、格好の魚の隠れ場になっている。その手前は、地を這うようなアキグミの木で被われた、広大なグミ原になっていた。
秋になり、水に潜れなくなると、今度はそのグミ原をかき分けて、「3つの溜り」に釣りに出かけた。途中、真っ赤に熟れたグミの実を枝ごととって、手で実をしごいてほおばり、種をぺっぺと吐き出しながら、釣り場まで急いだものである。グミの実はちょっと渋いのだが、それでも充分に甘くて、おやつ等ない時代には、好物だった。

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小学校6年の頃だと思う。毎朝、学校にいく前、5時過ぎから7時頃まで、赤川の「二の溜り」に釣りに通い詰めたことがあった。というのは、ある奇妙な発見をし、それに夢中になったためである。
そこは、ちょうど一番深くなっているところに、枕礁がはり出していて、上から覗くと深い淵の底まで見通すことができた。枕礁に腰をおろして竿を出すと、釣針の先のミミズが、水の底でくねくねと動いているのがよく見える。昼は木の枝がはり出した影から、なまずなどがぬっと出てきて、ミミズに興味を見せるのだが、ほとんど釣れることはなかった。
夏休みも終わって間もないある日の朝、いつもの枕礁に腰かけながら、釣りの準備をしていると、淵の底を40cmはあろうかと思われる、大きな鯉が悠々と泳ぎながら、足下に近付いてくるではないか。しかも、その後ろには、鯉や鮒が大きい順に20〜30尾もぞろぞろと続いているのだ。あわてて釣り竿を下ろしたのだが、その時はすでに遅く、通り過ぎていってしまった。
私は興奮しながらじっと待っていたのだが、30〜40分も待っただろうか、また、さっきの鯉の群れが回ってきたのだ。ミミズは通り道に沈めてある。息を呑んで見守っていると、一番前の大きな鯉がミミズに気がつき、近寄ろうとしている。早く食べてくれ!と緊張しながら竿を上げるタイミングを測っていたその時、後ろの方から小さな鮒が矢のように飛んできて、ミミズをくわえたのだ。思わず竿を勢いよく上げてしまったので、鯉の群れはぱっと散ってしまった。その日は、結局小さな鮒を1尾釣っただけだったが、それから毎朝通いはじめたのである。
通っていて分かったことは、毎朝6:00頃と7:00頃に決まって群れが回ってくることだった。しかし、大きい鯉は、口先でミミズをつつくだけですぐ通り過ぎていって、釣れるのはいつも小さな鮒ばかりだった。

その後、釣りとアキグミにまつわる貴重な体験をしたのだが、それは次回に。

……次回につづく……