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サルスベリ
02.08.23
お寺とサルスベリがどういう関係にあるのかは定かではないが、お寺の庭にはサルスベリが多い。
私の実家の庭の池の傍にも、サルスベリがあった。大きいものは高さ10メートルを超えるらしいが、家のサルスベリは5〜6メートルくらいで、子供の頃から少しも大きくなっているようには見えない。
いつも、お盆過ぎにピンクの花を咲かせ、母などはきれいだと賞賛するが、私は子供の頃からあまり好きではなかった。まず、あの皮を無理矢理剥がしたような木の肌がダメで、あの茫洋として、しかもどぎついピンクの花にも馴染めなかった。
好きではないもう一つの理由は、子供の頃、祖父によく聞かされた昔話に由来するものである。

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私が5〜6才頃、祖父はよく炉端で昔話をしてくれたのだが、その中に、サルスベリの話があった。一般的にどの家でも語られていたものかよく分からないが、似たような話は、本などで見た覚えがあるので、知っている人もあるかも知れない。
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昔、あるところに百姓の老夫婦とかわいい孫娘が暮らしていた。畑仕事はおじいさんには辛い作業で、ある日、畑の切り株を掘り起こしながら、ついうっかり「誰かこの仕事を代わってくれるなら、娘を嫁にやってもいい」と、呟いてしまった。
それを聞き付けた猿が、「私が手伝ってあげましょう」と、あっという間に切り株を掘り起こし、畑を耕してしまい、
「明日、娘さんを迎えに行くから」と山に帰っていったのである。
困ったのはおじいさんで、かわいい孫娘を、まさか猿に嫁にやるわけにはいかない。 家に帰って娘に相談すると、娘は
「おじいさん、大丈夫、私にまかしてください。そこで一つお願いですが、大きな臼と米を用意してください。」といって、おじいさんを安心させる。
次の朝、猿が目一杯着飾って山から降りてきて、娘を連れていこうとする。
娘は、
「お猿さん、おじいさんを助けてもらったのですから喜んでお嫁にいきますが、お猿さんの家に着いたら、お祝をしなければいけません。この臼と米をかついでいってもらえませんか?」
猿は大喜びで、臼と米をかつぐ。
「大事な臼ですから、落とさないようにしっかりと結わえてくださいね」
娘は、縄で幾重にも臼を猿に結び付け、猿の棲んでいる山に向かう。
途中、猿が、自分は前から娘のことがどんなに好きであり、病気の母親にこのことを話したら、どんなに喜んだかを娘に話す。
娘は涙を流しながら、母親を大切にすると誓う。
山をいくつも超えて、大きな沼のほとりに出ると、そこに大きなサルスベリの木があり、沼の上に枝を広げて、見事な花を咲かせている。
「あの花を、お母さんに持っていったら、きっと喜ぶでしょう」
娘が呟くと、猿は早速木に登って花を取ろうとする。
「その辺の花は、草の匂いがして、お母さんはきっといやがるわ。もっとしんぺ(もっと上の方)」という。
「この辺の花はどうだろう?」
「いや、その辺は小鳥がよくくるから、小鳥の匂いがするわ。もっとしんぺ!」
「この辺は?」「もっとしんぺ!」「この辺は?」「もっとしんぺ!」
と、猿はどんどん上に登らされ、最後には枝がぽきんと折れて、沼に落ち、沈んでしまう。重い臼を背負っていたため、泳げないのだ。
娘は意気揚々とおじいさんのところへ帰って、めでたし、めでたし。
トンピンカラリ、ツツギノハナヨで話は終わる。
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この話の「もっとしんぺ!」という、歌うような口調は今でも耳に残っているが、私はこの話を聞くのが嫌いだった。
「爺ちゃや、この昔だば、聞ぎだぐね」
「なしてや?」
「したて、猿どご、めじょけねさげ」
「なにめじょけねや」
「したたての、猿だば、何も悪いごどしてねなさ、なして殺さえんなだや」
「んだば、このまま猿の嫁なったほがいいなだが?」
「んん、んだども、このあねちゃは嘘こいだ、嘘泣ぎした」
子供心にも、私はこの娘の嘘が許せなかったのだろう。

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サルスベリの花を見ると、この昔話を思い出す。娘の計略にはまって、命を落とす猿が哀れに思えてくるが、この昔話が何を言おうとしているのか、いまだによく分からない。まさか、女を信用しちゃいけない、と言ってるわけじゃないよね!
お寺にサルスベリが多いのは、この猿を供養するためだったりして。それなら納得。

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