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キタヨツバシオガマ(北四葉塩竃) ゴマノハグサ科シオガマギク属

キタヨツバシオガマ
撮影日:2003年8月16日|場所:山形県鶴岡市月山弥陀ヶ原

この写真を撮った時は、この花はヨツバシオガマだとばかり思っていました。というのも、その前年、蔵王でヨツバシオガマを撮っていたからです。
ところが、今回改めて調べて見ると、ヨツバシオガマとはいろいろ違うところがあることに気が付きました。
まず、一番違うところは、背の高さと花の付く段数です。
ヨツバシオガマの花は、花茎に対して5〜6個輪生し、数段重なるように咲くのですが、月山のヨツバシオガマは、花茎が非常に長く、数えて見ると20近くも重なって咲いています。しかも、段と段の間が長いため、背丈も50〜70cm近くになり、雄大に見えます。
これはどうみてもヨツバシオガマの姿ではありません。どちらかと言えば、レブンシオガマに近い姿です。
「月山のヨツバシオガマ」で検索してみると、観光案内などでは「ヨツバシオガマ」となっているのが多いようですが、「キタヨツバシオガマ」と書いてあるものもあります。 どうもこの、「キタヨツバシオガマ」というのが正解に近いようです、が、もうひとつ気になることがあります。
それは、この月山のヨツバシオガマは、ガクと茎に斑な斑点があることです。
これは個体差なのか、それとも花が終わりに近いために出てきた斑点なのか。


<2011年8月2日>■検証
下の(1)(2)の写真は2003年8月16日に撮影したもので、花はもうほとんど終っています。
(3)(4)の写真は、2008年7月2日に撮影したもので、花の咲き始めです。
まず、花を見て見ます。(1)を見ると、花の段数が真ん中の花で19段ほどあり、段と段の間隔が開いていることがわかり、(2)を見ると1段に6つの花が輪生していることがわかります。
これはヨツバシオガマの特徴からは大きく外れ、レブンシオガマに近い特徴です。

(3)は、まだ咲き始めのためか、今のところ段数は10段もなく、段の間隔も狭くなっていて、ヨツバシオガマのように見えます。
ところが、1段の花の数を見ると、やはり5〜6個はあるようで、また、花茎の頭頂を見るとまだ、どんどん伸びていく気配です。
これが成長すれば、(1)の姿になるのは間違いないようです。

次にガクと花茎の斑点を見てみます。
(2)をみるとガクと花茎には明瞭に斑点が浮かんでいますが、(4)では花茎には斑点が出ていますが、ガクには全くないようです。
これから見ると、花が終わりに近づくにつれ、斑点がはっきりしてくるといったことが言えるかもしれません。

ついでに葉の数を見ると、(4)では一番下に映っている葉の数は、茎を取り巻くように5枚はありそうです。
また、(2)を見ると、葉の名残と思われるガクの下にある細い葉の様なものが、1段に5〜6枚ほどはありそうです。

以上の点から、月山のこの花は、ヨツバシオガマではなく、キタヨツバシオガマかあるいは、別のシオガマギク属の花であると思われます。 ちなみに、近くの鳥海山のヨツバシオガマを調べて見たら、月山のものとほとんど同じでした。

キタヨツバシオガマ ▲(1)8月16日撮影。花が終わりに近い。

  キタヨツバシオガマ ▲(2)(1)のアップ。

キタヨツバシオガマ ▲(3)7月2日撮影。花の咲き始め   キタヨツバシオガマ ▲(4)(3)のアップ。

 
キタヨツバシオガマ・メモ
■キタヨツバシオガマの特徴
花が非常に特徴的で、鳥の頭部の形をしています。
花の形は二唇形で、上唇は鳥の頭部と嘴の形をしており、下唇は鳥の翼を広げたような形をしています。
目まで付いているように見えるから不思議です。
花茎の高さは、ヨツバシオガマは50cmほどですが、キタヨツバシオガマは60〜70cmにもなるようです。
その花茎を取り巻くように葉と花が5〜6個輪生し、10数段花を重ねます。花は下から咲いていき、最上段が咲く頃には、2〜3段下の花は、すでに終わっています。
葉はシダの葉に似て、三角形で羽状に数回深く切れ込み、縁は鋸歯状になっていて、5〜6枚輪生します。
上に行くほど小さくなり分裂も少なくなって、最後には鋸歯もなくなって細い顎片の様な形になってしまうようです。
ヨツバシオガマの分布は日本中部以北となっているようですが、キタヨツバシオガマの分布は飯豊以北の東北と北海道になっているようです。
キタヨツバシオガマ ▲花が鳥の頭部の形をしている。